今日は、VBA(特にExcel VBA)における日本語変数の活用について、その魅力と実践的なテクニックをお伝えします。この記事は、以下のような方に特におすすめです。
- 個人開発者としてVBAをしている方
- 日本国内でのみVBAをしている方
- 母国語が日本語の方
- 英語力向上よりも、効率的なコーディングを重視している方
- パソコンのOS:Windowsの方
※会社内やチームにコーディングルールがある場合にはそれに従うことをおすすめします!
日本語変数を使うことで、コーディングの効率が劇的に向上し、メンテナンス性も高まります。特に、上記の条件に当てはまる方々にとって、日本語変数の活用は大きなメリットをもたらします。それでは、詳しく見ていきましょう。
1. 日本語変数のメリット
1.1 読みやすさと理解のしやすさ
母国語の強み
日本語変数を使用することで、コードの意味が直感的に理解できます。例えば、「基準日」「店番」「顧客番号」「顧客名」といった変数名を見れば、その変数が何を表しているか一目瞭然です。これは特に、業務ロジックを扱う場合に大きな強みとなります。
日本語を英訳した場合に何を意味しているか直感的に分かりますか?
Sub 英語変数の例()
'変数宣言
Dim BaseDate As Date
Dim StoreCode As Long
Dim StaffNumber As Long
Dim CustomerName As String
end Sub
Sub 日本語変数の例_01()
'変数宣言
Dim 基準日 As Date
Dim 店番 As Long
Dim 顧客番号 As Long
Dim 顧客名 As String
End Sub
コードの流し読みが容易に
日本語変数を使用すると、コードを流し読みする際に、変数の意味を瞬時に把握できます。例えば、以下のようなコードを見てみましょう。
Sub 日本語変数の例_02()
'変数宣言
Dim 当期純利益 As Double
'変数名:当期純利益に「-100~100」の範囲の乱数を代入する
当期純利益 = WorksheetFunction.RandBetween(-100, 100)
If 当期純利益 > 0 Then
MsgBox "黒字の会社"
Else
MsgBox "赤字の会社"
End If
End Sub
このコードは、英語変数を使用した場合よりも、はるかに理解しやすいですね。
1.2 命名の簡易さ
翻訳の手間が不要
日本語で考えたロジックをそのままコードに落とし込めるため、英語への翻訳の手間が省けます。これにより、コーディングの速度が向上し、ミスも減少します。
短い文字数で多くの意味を表現
日本語は英語に比べて、少ない文字数で多くの意味を表現できます。例えば、「税引前当期純利益」という変数名は、英語で表現しようとすると非常に長くなってしまいますが、日本語なら簡潔に表現できます。
Sub 日本語変数と英語変数の比較()
'例:税引前当期純利益
'日本語変数の場合
Dim 税引前当期純利益 As Long
'英語変数の場合
Dim IncomeBeforeIncomeTaxes As Long
End Sub
1.3 コードの構造把握
日本語と英語の視覚的な区別
日本語変数と英語のキーワードを混在させることで、コードの構造が視覚的に明確になります。例えば、
Sub サンプル01()
'変数宣言
Dim セル As Range
Dim 合計する範囲 As Range
Dim 合計 As Long
Set 合計する範囲 = Range("A1:A10")
合計する範囲.Value = ""
合計する範囲.Value = WorksheetFunction.RandBetween(1, 10)
For Each セル In 合計する範囲
If セル.Value > 0 Then
合計 = 合計 + セル.Value
End If
Next
MsgBox 合計
End Sub
このように、制御構文は英語、変数は日本語というように区別することで、コードの構造が一目で分かります。
処理の流れが一目瞭然
日本語変数を使用することで、処理の流れを日本語で追うことができます。これにより、ロジックの理解が容易になり、デバッグやメンテナンスの効率が向上します。
2. 日本語変数活用のコツ
2.1 適切な使用場面
自分用のコード
個人開発の場合、日本語変数の使用は特に効果的です。自分だけが理解できればよいコードなら、遠慮なく日本語変数を活用しましょう。
日本語環境でのみ使用されるプロジェクト
日本国内の企業や組織向けのプロジェクトでは、日本語変数の使用が非常に有効です。例えば、信用金庫のシステムでは、「店番」「顧客番号」「科目コード」といった日本語変数を使用することで、業務知識とコードの橋渡しがスムーズになります。
2.2 命名のガイドライン
助詞や送り仮名を省略しない
読みやすさを重視するなら、「コピー範囲」ではなく「コピーする範囲」、「データ開始行」ではなく「データの開始行」のように、助詞や送り仮名を省略しないことをおすすめします。
Sub 助詞や送り仮名を省略しない変数名の例()
Dim コピーする範囲 As Range
Dim データの開始行 As Long
End Sub
3. 日本語変数のデメリットとその対策
3.1 国際化の課題
多国籍チームでの使用制限
日本語変数は、日本語を理解しない開発者との協業では問題になる可能性があります。しかし、個人開発者や日本国内でのみ使用されるプロジェクトでは、この問題は無視できるでしょう。
英語力向上の機会損失
日本語変数を使用することで、プログラミングを通じた英語学習の機会が減少する可能性があります。ただし、英語力向上を望んでいない場合は、これは問題にはなりません。
3.2 技術的な課題
入力切り替えの手間
日本語入力と英語入力の切り替えが必要になるため、タイピングの速度が低下する可能性があります。しかし、慣れれば大きな問題にはならないでしょう。
インテリセンスの問題
一部の開発環境(特にMac版)では、日本語変数に対するインテリセンス(入力補完)が正常に機能しない場合があります。ただし、最近のVBA開発環境では、この問題は改善されつつあります。Windows版では問題になることはないでしょう。
4. まとめ
日本語変数の活用は、個人開発者にとって非常に有効なアプローチです。ここで、その主要なポイントを振り返ってみましょう。
- 直感的な理解:日本語変数を使用することで、コードの意味が瞬時に理解できます。例えば、「売上高」「税引前当期純利益」といった変数名は、その内容を明確に表現しています。
- 業務ロジックの反映:信用金庫のシステムなど、日本の業務環境に特化したプロジェクトでは、「店番」「顧客番号」「科目コード」のような日本語変数が非常に有効です。
- コードの構造化:日本語変数と英語のキーワードを組み合わせることで、コードの構造が視覚的に明確になります。
- 効率的な開発:日本語で考えたロジックをそのままコードに落とし込めるため、開発速度が向上し、ミスも減少します。
- メンテナンス性の向上:日本語変数を使用することで、後からコードを見直す際も、その意味や目的が理解しやすくなります。
- 型の明確化:「As Worksheet」「As Long」「As Double」など、変数の型を明確に指定することで、より堅牢なコードを作成できます。
日本語変数の使用には、入力切り替えの手間やインテリセンスの問題など、いくつかの課題もありますが、個人開発者や日本国内でのプロジェクトにおいては、そのメリットが大きく上回ります。VBA開発において日本語変数を積極的に活用することで、より読みやすく、メンテナンスしやすい、高品質なコードを作成することができます。ぜひ、あなたのプロジェクトでも日本語変数を取り入れ、効率的で分かりやすいコーディングを実践してみてください。
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