【現役の信用金庫職員が解説!】融資をしたくなる決算書とは~損益計算書~

こんにちは。信用金庫で融資担当を務めているしんちゃんと申します。今回は、銀行が融資をしたくなる会社の決算書について、私の経験を交えながら詳しくお話しします。起業を考えている方や、中小企業の経営者の皆様にとって、融資を受けやすい決算書作りのヒントになれば幸いです。

目次

1. 決算書の重要性を理解する

銀行が融資を検討する際、最も重視するのが決算書です。決算書は企業の財務状況を示す重要な書類であり、融資の可否を左右する大きな要因となります。

銀行が注目する3つのポイント

銀行員として、私たちが決算書を見る際に特に注目するのは以下の3点です。

  1. 売上高
  2. 利益
  3. キャッシュフロー

これらの項目は、企業の成長性、収益力、そして資金繰りの状況を端的に表しています。例えば、売上高が継続的に増加している企業は成長性が高いと判断されます。また、安定した利益を上げている企業は、返済能力が高いと評価されます。

キャッシュフローについては、特に営業キャッシュフローが重要です。これは本業からどれだけの現金を生み出しているかを示す指標で、返済原資の確保という観点から銀行は重視します。

2. 利益の種類と銀行の視点

決算書には様々な利益が記載されていますが、銀行が特に注目するのは以下の3つです。

重要な3つの利益

  1. 売上総利益
  2. 営業利益
  3. 経常利益

これらの利益は、それぞれ異なる意味を持っています。

売上総利益
売上総利益は、売上高から売上原価を引いたものです。この利益は、企業の本業における基本的な収益力を示します。経営者の方々には、この数字を常に意識していただきたいと思います。なぜなら、この数字が高ければ高いほど、その企業の商品やサービスの競争力が高いことを意味するからです。

営業利益
営業利益は、売上総利益から販売費及び一般管理費を引いたものです。これは企業の本業における真の収益力を示す指標です。銀行員としては、この数字が2期連続で赤字になっている企業には警戒心を抱きます。なぜなら、本業で利益を出せていないということは、企業の存続に関わる重大な問題だからです。

経常利益
経常利益は、営業利益に営業外収益を加え、営業外費用を引いたものです。この数字は、企業の総合的な収益力を示します。銀行としては、この数字が安定して黒字であることを期待します。

3. 差別化の重要性

銀行融資を受けやすくするためには、業界平均を上回る業績を示すことが重要です。そのためには、自社の差別化戦略が鍵となります。

業界平均を上回る方法

  • 独自のサービス提供
  • マネーのしにくい戦略の構築

例えば、ある飲食店が業界平均を大きく上回る売上総利益率を示していたとします。これは、その店舗が他店にはない独自のメニューや、特別なサービスを提供していることを示唆しています。このような差別化戦略は、銀行にとって非常に魅力的に映ります。

私が実際に融資を担当した例を挙げますと、地方の小さな製造業者がありました。この会社は、大手メーカーが手を出さないニッチな市場に特化し、そこで圧倒的なシェアを獲得していました。結果として、業界平均を大きく上回る利益率を実現し、融資の審査もスムーズに通過しました。

4. 銀行が重視する財務指標

銀行が融資を検討する際、いくつかの重要な財務指標があります。これらの指標が一定の水準を満たしていれば、融資を受けやすくなります。

チェックすべき3つの指標

  1. 営業利益率:5%以上
  2. 経常利益率:3%以上
  3. インタレストカバレッジレシオ:3倍以上

営業利益率
営業利益率は、売上高に対する営業利益の割合です。この数値が5%以上あれば、銀行は好意的に評価します。例えば、売上高1億円の企業で営業利益が500万円以上あれば、この基準を満たすことになります。

経常利益率
経常利益率は、売上高に対する経常利益の割合です。3%以上あれば良好と判断されます。売上高1億円の企業で経常利益が300万円以上あれば、この基準を満たします。

インタレストカバレッジレシオ
インタレストカバレッジレシオは、営業利益を支払利息で割った値です。この数値が3倍以上あれば、借入金の返済に十分な余裕があると判断されます。例えば、営業利益が3000万円で支払利息が1000万円の場合、インタレストカバレッジレシオは3倍となり、この基準を満たします。

これらの指標は、企業の収益力と返済能力を示す重要な指標です。融資を検討している経営者の方々は、これらの数値を常に意識し、改善に努めることをお勧めします。

5. 赤字を避けるための戦略

銀行が最も警戒するのは、継続的な赤字です。特に以下の状況は要注意です。

銀行が警戒する状況

  • 2期連続の営業利益赤字
  • 経常利益の継続的な低下

2期連続で営業利益が赤字になると、銀行は企業の存続可能性に疑問を抱きます。また、経常利益が継続的に低下している場合も、将来的な返済能力に不安を感じます。

。赤字を避けるためには、以下のような戦略が効果的です。

  1. コスト削減:不要な経費を見直し、固定費を可能な限り変動費化する
  2. 売上増加:新規顧客の開拓や既存顧客へのアップセルを強化する
  3. 高付加価値化:商品やサービスの質を向上させ、利益率を改善する

私が担当した企業で、2期連続赤字から脱却した例があります。この会社は、徹底的なコスト見直しと同時に、顧客ニーズに合わせた新サービスの開発を行いました。結果として3期目には黒字転換を果たし、その後の融資も円滑に進みました。

6. 自己資本比率の重要性

自己資本比率は、企業の財務健全性を示す重要な指標です。この比率が高いほど、企業の財務基盤が安定していると判断されます。

健全な財務状態の維持

  • 自己資本比率の目安:20%以上
  • 業種によって適正な比率は異なる

自己資本比率は、総資産に対する自己資本の割合で計算されます。一般的に20%以上あれば健全と判断されますが、業種によって適正な比率は異なります。例えば、製造業では30%以上、サービス業では15%以上が目安となることがあります。

自己資本比率を高めるためには、以下のような方策が考えられます。

  1. 利益の内部留保:配当を抑え、利益を社内に蓄積する
  2. 増資:新株発行により資本を増強する
  3. 資産の圧縮:不要な資産を売却し、総資産を減らす

私の経験上、自己資本比率が高い企業ほど、融資の審査がスムーズに進む傾向にあります。特に、景気変動の影響を受けやすい業種では、高い自己資本比率が重要になります。

7. 経営者が知っておくべき決算書のポイント

最後に、経営者の皆様に知っておいていただきたい決算書のポイントをお伝えします。

実践的なアドバイス

  1. 役員報酬の適切な設定
  2. 本業の収益力強化の重要性

役員報酬の設定
役員報酬は、企業の利益に大きな影響を与えます。過度に高額な役員報酬は、企業の利益を圧迫し、銀行の評価にも悪影響を及ぼします。一方で、役員報酬を極端に抑えて利益を出すことも、銀行からは好ましく見られません。
適切な役員報酬の設定は、企業規模や業績、業界標準などを考慮して決定する必要があります。私が経験した事例では、業績に連動した役員報酬制度を導入することで、銀行からの評価が向上した企業もありました。

本業の収益力強化
銀行が最も重視するのは、本業での収益力です。営業外収益や特別利益で利益を出しているケースよりも、本業で安定した利益を出している企業の方が、融資を受けやすくなります。
本業の収益力を強化するためには、以下のような取り組みが効果的です。

  1. 顧客ニーズの徹底分析と商品・サービスの改善
  2. 営業力の強化と新規顧客の開拓
  3. 業務効率化によるコスト削減

私が担当した企業で印象的だったのは、徹底的な顧客アンケートを実施し、そこから得た情報を基に商品ラインナップを見直した会社です。結果として売上が大幅に増加し、営業利益率も改善しました。

まとめ

以上、銀行が融資をしたくなる会社の決算書について、詳しく解説してきました。ポイントをまとめると以下のようになります。

  1. 売上高、利益、キャッシュフローが重要
  2. 売上総利益、営業利益、経常利益に注目
  3. 差別化戦略で業界平均を上回る
  4. 営業利益率5%以上、経常利益率3%以上、インタレストカバレッジレシオ3倍以上を目指す
  5. 2期連続の赤字は避ける
  6. 自己資本比率を高める
  7. 役員報酬の適切な設定と本業の収益力強化

これらのポイントを押さえた決算書を作成することで、銀行からの融資を受けやすくなります。ただし、決算書は企業の過去の実績を示すものです。銀行は将来の成長性も重視しますので、事業計画や今後の展望についても明確に説明できるようにしておくことが大切です。

最後に、銀行融資は企業経営における重要な資金調達手段の一つですが、過度な借入は避けるべきです。健全な財務体質を維持しながら、持続的な成長を目指すことが、長期的な企業の発展につながります。

皆様の企業が、素晴らしい決算書を作成し、円滑な資金調達を実現されることを心より願っております。

参考文献

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次