【現役の信用金庫職員が解説!】銀行格付の話~Part7~

今回は、多くの中小企業経営者の皆様が関心を持たれている「企業格付け」について、その仕組みと対策をご紹介します。

目次

1. 企業格付けとは何か?

企業格付けは、銀行が融資先の信用力を評価するための重要なツールです。この格付けは、融資の可否だけでなく、金利や融資条件にも大きな影響を与えます。

銀行が行う自己査定の概要

自己査定とは、銀行が融資先の財務状況を詳細に分析し、その健全性を評価するプロセスです。この過程で、企業の資産内容や返済能力が精査されます。

格付けが融資判断に与える影響

格付けの結果は、融資の承認、金利の設定、融資限度額の決定など、様々な面で影響を及ぼします。高い格付けを得ることで、より有利な条件での融資を受けられる可能性が高まります。

2. 格付けの基準:銀行はどこを見ているのか

貸借対照表の精査

銀行は貸借対照表を通じて、企業の財務状況を総合的に評価します。特に注目されるのは以下の点です。

資産の実態評価

銀行は、貸借対照表に記載された資産の実際の価値を慎重に評価します。例えば、売掛金や在庫などの資産が実際に回収可能か、または売却可能かを詳細に検討します。

純資産額の重要性

純資産額は企業の財務健全性を示す重要な指標です。銀行は、純資産額が十分であるかを確認し、債務超過のリスクを評価します。

回収不能債権のチェック

銀行は、売掛金や貸付金などの債権が実際に回収可能かどうかを慎重に査定します。長期未回収の債権や、回収が困難と思われる債権は、資産価値から差し引かれる可能性があります。

在庫の評価

過剰在庫や不良在庫は、企業の財務状況に悪影響を与える可能性があります。銀行は、在庫の実際の価値や売却可能性を評価し、必要に応じて資産価値を修正します。

3. 格付けを左右する重要ポイント

長期未回収債権の処理

長期にわたって回収できていない債権は、銀行から見て回収リスクが高いと判断される可能性があります。このような債権は、適切に処理することが重要です。

不渡手形の影響

不渡手形は、企業の信用力に大きな影響を与えます。銀行は、不渡手形の発生状況を注意深く確認し、企業の支払能力を評価します。

関係会社への貸付金の扱い

関係会社への貸付金、特に長期にわたって回収されていないものは、銀行から見て回収リスクが高いと判断される可能性があります。このような貸付金の管理と適切な処理が重要です。

有価証券の評価方法

保有する有価証券の価値変動も、企業の財務状況に影響を与えます。銀行は、有価証券の時価評価を行い、必要に応じて資産価値を修正します。

4. 減価償却の取り扱い:銀行と会計の違い

財務会計と税務上の減価償却の違い

財務会計上の減価償却と税務上の減価償却には違いがあります。財務会計では、資産の価値が著しく下落した場合、減価償却を行わないこともありますが、税務上は法定償却を行う必要があります。

銀行による法定償却のチェック方法

銀行は、企業が適切に法定償却を行っているかを確認します。具体的には、税務申告書の別表十六を確認し、未償却残高が適切に処理されているかをチェックします。

5. 格付けアップのための対策

純資産額の維持・向上

純資産額を維持・向上させることは、企業の財務健全性を示す上で重要です。利益の積み上げや増資などを通じて、純資産額を適切に管理しましょう。

不良債権の早期処理

回収が困難な債権は、早期に適切な処理を行うことが重要です。長期未回収債権や回収不能と判断される債権は、適時に償却するなどの対応が必要です。

在庫管理の徹底

過剰在庫や不良在庫は、企業の資金繰りを圧迫し、財務状況を悪化させる要因となります。適切な在庫管理を行い、不要な在庫を抱えないようにしましょう。

適切な減価償却の実施

法定償却を適切に行うことは、銀行からの信頼を得る上で重要です。減価償却を適切に行い、財務諸表に正確に反映させましょう。

6. 格付けと融資の関係:債務超過のリスク

債務超過が融資に与える影響

債務超過は、銀行にとって大きなリスク要因です。債務超過状態が続くと、新規融資の獲得が困難になるだけでなく、既存の融資の継続も難しくなる可能性があります。

継続的な資金繰りの重要性

企業の継続的な運営には、安定した資金繰りが不可欠です。債務超過を回避し、健全な財務状態を維持することで、銀行からの継続的な支援を受けやすくなります。

7. まとめ:企業経営者が押さえるべきポイント

自社の財務状況の正確な把握

企業経営者は、自社の財務状況を正確に把握し、常に最新の情報を持っておくことが重要です。特に、以下の点に注意を払いましょう。

  1. 純資産額の推移
  2. 回収不能債権の状況
  3. 在庫の実態
  4. 減価償却の適切な実施

銀行の視点を理解した経営戦略の立案

銀行の評価基準を理解し、それに沿った経営戦略を立案することが重要です。具体的には、

  1. 長期的な財務健全性の維持
  2. 適切な資産管理
  3. 透明性の高い財務報告
  4. 継続的な収益力の向上

これらの点に注意を払いながら経営を行うことで、銀行からの信頼を得やすくなり、より有利な条件での融資を受けられる可能性が高まります。

最後に、企業格付けは一朝一夕で改善できるものではありません。日々の経営努力の積み重ねが、結果として格付けの向上につながります。経営者の皆様には、長期的な視点を持って、健全な経営を心がけていただきたいと思います。

銀行は、皆様の事業の成長と発展を支援するパートナーです。本記事が、皆様と銀行との良好な関係構築の一助となれば幸いです。

参考文献

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