【現役の信用金庫職員が解説!】銀行格付の話~Part2~

こんにちは。地域の中小企業の皆様を日々サポートしている信用金庫職員のしんちゃんと申します。今回は、多くの経営者の方々から質問を受ける「銀行融資」について、特に重要な「格付けシステム」に焦点を当ててお話しします。融資の可否や条件を大きく左右する格付けシステムを理解することで、より有利な条件での資金調達が可能になります。この記事を通じて、皆様の事業発展に役立つ知識をお伝えできれば幸いです。

目次

1. 銀行の格付けシステムの全体像

銀行の格付けシステムは、融資先企業の信用力を評価するための重要なツールです。このシステムは主に3段階の評価で構成されており、各段階が融資の決定に大きな影響を与えます。

3段階評価の仕組み

  1. 第一次評価:財務分析
  2. 第二次評価:定性分析
  3. 第三次評価:個人資産と実態把握

各段階の重要性と影響

第一次評価が全体の約70%を占め、最も重要視されます。第二次評価は約20-30%、第三次評価は残りの割合を占めています。この比率は金融機関によって若干異なりますが、財務分析が最も重視されることは共通しています。

2. 第一次評価:財務分析の重要性

財務分析は、企業の財務状況を数値化して評価する過程です。この段階で高得点を獲得することが、有利な融資条件を引き出す鍵となります。

129点満点中の目標スコア

財務分析の満点は129点です。ここで重要なのは、55点以上を目指すことです。55点を超えると、無担保融資の可能性が高まります。さらに、60点以上になると、運転資金の無担保融資がより容易になります。

主要チェックポイント

銀行は主に以下の3点を重点的にチェックします。

  1. 売上高:安定した売上高の推移は、事業の健全性を示す重要な指標です。
  2. 在庫:適正な在庫管理は、資金効率の良さを示します。
  3. 現金勘定:手元資金の状況は、短期的な支払能力を示す重要な指標です。

これらの項目に加えて、減価償却の状況や貸付金・仮払金の管理状況なども確認されます。

3. 第二次評価:定性分析の役割

財務数値だけでは把握できない企業の質的側面を評価するのが第二次評価です。この段階では、企業の将来性や経営の安定性が判断されます。

経営方針の評価

経営者のビジョンや経営戦略の明確さ、実現可能性などが評価されます。具体的な事業計画の有無や、その内容の妥当性なども重要なポイントです。

従業員の仕事ぶり

従業員のモチベーションや技術力、チームワークなども評価の対象となります。これらは企業の持続的成長の基盤となる要素だからです。

業界動向の考慮

企業が属する業界の将来性や、その中での自社の位置づけも重要な評価ポイントです。成長産業に属しているか、あるいは衰退産業でも独自の強みを持っているかなどが判断されます。

4. 第三次評価:個人資産と実態把握

最後の段階では、経営者個人の資産状況や、財務諸表の実態修正が行われます。

連帯保証人の資産状況

多くの中小企業融資では、経営者の個人保証が求められます。そのため、経営者の個人資産状況も評価の対象となります。不動産や有価証券などの資産保有状況が確認されます。

財務諸表の実態修正

公式の財務諸表に表れない実態を把握するため、銀行は様々な角度から分析を行います。例えば、粉飾決算の可能性や、オフバランス取引の有無なども確認されます。日本の中小企業の約35%が何らかの形で財務諸表に不正確な部分があるとされており、銀行はこの点に特に注意を払っています。

5. 格付けスコアと融資条件の関係

格付けスコアは、融資の可否だけでなく、金利や担保条件にも大きな影響を与えます。

55点以上の意味

55点を超えると、無担保融資の可能性が出てきます。これは、企業の信用力が一定のレベルに達したと判断されるためです。

60点突破の重要性

60点を超えると、より有利な条件での融資が可能になります。例えば、運転資金の場合、月商の1ヶ月分程度なら無担保で融資を受けられる可能性が高くなります。

6. 銀行別の評価傾向

金融機関の種類によって、評価の傾向に違いがあります。これを理解することで、自社に適した金融機関を選択できます。

メガバンク vs 地方銀行 vs 信用金庫

  • メガバンク:財務分析重視。定性評価はほぼ行わない傾向にあります。
  • 地方銀行:財務分析に加え、定性評価も一定程度行います(全体の約10%程度)。
  • 信用金庫:定性評価の比重が最も高く、全体の約20%を占めます1。

評価の違いと特徴

メガバンクは数値重視の傾向が強く、地方銀行や信用金庫は企業の質的側面もより重視します。特に信用金庫は、地域密着型の営業を行っているため、企業の地域での評判や将来性などをより詳細に評価する傾向があります。

7. 経営者が取るべきアクション

格付けシステムを理解したうえで、経営者の皆様に取っていただきたいアクションをご紹介します。

自社の格付けスコア把握の重要性

まずは自社の現在の格付けスコアを把握することが重要です。これにより、改善すべき点が明確になります。取引のある金融機関に直接問い合わせるか、専門家のアドバイスを受けることをお勧めします。

改善のためのステップ

  1. 財務体質の強化:売上高の安定的な増加、適正な在庫管理、手元流動性の確保に注力してください。
  2. 経営の透明性向上:正確で詳細な財務諸表の作成、経営計画の明確化を心がけましょう。
  3. 事業の将来性アピール:業界動向を踏まえた自社の強みや成長戦略を明確に説明できるようにしてください。
  4. 従業員教育の充実:従業員のスキルアップや、モチベーション向上のための施策を実施しましょう。
  5. 個人資産の適切な管理:経営者個人の資産状況も融資判断に影響するため、適切に管理してください。

8. まとめ:融資交渉を有利に進めるためのポイント

最後に、融資交渉を有利に進めるためのポイントをまとめます。

  1. 自社の格付けを把握する:現状を正確に理解することが改善の第一歩です。
  2. 財務体質の改善に注力する:特に55点、60点の壁を意識して改善を図りましょう。
  3. 定性面の強化:経営方針の明確化、従業員教育、業界動向の把握に努めてください。
  4. 適切な金融機関の選択:自社の特性に合った金融機関を選びましょう。
  5. 正直な情報開示:粉飾決算などは絶対に避け、正直な情報開示を心がけてください。
  6. 継続的なコミュニケーション:日頃から金融機関とのコミュニケーションを大切にしましょう。

以上、銀行の格付けシステムについて詳しく解説しました。この知識を活用し、より有利な条件での資金調達を実現していただければ幸いです。皆様の事業のさらなる発展を、私たち信用金庫職員も全力でサポートしてまいります。融資に関するご相談は、お近くの信用金庫窓口まで、お気軽にお問い合わせください。

参考文献

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