【現役の信用金庫職員が解説!】銀行格付の話~Part1~

こんにちは。私は現役の信用金庫職員として、日々中小企業の皆様の資金調達のお手伝いをしています。今回は、多くの経営者の方々が気にされている「銀行格付け」について、その仕組みと活用方法をお伝えしたいと思います。

自己査定信用格付は厳密には違いがありますが、本記事では区分せずに説明しております。あらかじめご了承ください。

▼ 自己査定とは
金融機関の保有する資産を個別に検討して、回収の危険性、または価値の毀損の危険性の度合いにしたがって区分することを資産査定という。資産査定は、預金者の預金などがどの程度安全確実な資産と見合っている、言い換えれば、資産の不良化によりどの程度の危険にさらされているかを判定するものであり、金融機関自らが行う資産査定を自己査定という。

▼ 信用格付とは
信用格付とは、信用リスクの程度に応じて、債務者または融資案件を統一的な尺度で評価し、ランク付けする制度である。信用リスク管理をより精緻に行ううえで需要な役割を果たし、信用リスクの定量的管理の基礎をなすものである。

▼ 債務者区分と信用格付の関係例

債務者区分信用格付
正常先A1
A2
A3
A4
A5
要注意先B1
B2
B3
破綻懸念先C1
C2
実質破綻先
破綻先

出典:改訂信用金庫・信用組合の会計実務と監査-自己査定・償却引当編-

目次

銀行格付けの基本

格付けとは何か

銀行格付けは、平成10年秋から導入された企業評価の手法です。当時、日本は不良債権処理に苦しんでおり、金融機関の健全性を保つために、アメリカの企業評価方法を参考に導入されました。

この制度は、単なる融資の可否を決める仕組みではありません。むしろ、企業の健康状態を診断する重要なツールなのです。

格付けの重要性

格付けは、融資の可能性に大きな影響を与えます。しかし、それ以上に重要なのは、自社の財務状況を客観的に把握できる点です。これは、まさに企業の健康診断と言えるでしょう。

格付けの仕組み

5段階評価システム

銀行格付けは、主に以下の5段階で評価されます。

  1. 正常先
  2. 要注意先
  3. 破綻懸念先
  4. 実質破綻先
  5. 破綻先

各カテゴリーの特徴と割合

  • 正常先:約75%の企業がこのカテゴリーに該当します。通常の融資が受けられる可能性が高い状態です。
  • 要注意先:約20%の企業がこれに該当します。返済に若干の懸念がある状態です1。
  • 破綻懸念先以下:約5%の企業がこれらのカテゴリーに該当します。融資を受けることが非常に困難な状態です1。

格付けを決める要素

主要な財務指標

格付けを決定する上で、最も重要な3つの指標があります。

  1. 営業利益
  2. 経常利益
  3. 純資産

これらの3つの指標で、格付けの約95%が決まると言っても過言ではありません。

その他の評価項目

上記の主要指標以外にも、13〜55項目のチェックリストがあります。これには財務面だけでなく、経営者の資質や事業の将来性なども含まれます。

格付けに関する誤解

決算書の見栄えを良くするだけでは不十分

よく耳にするのが、「仕訳を変更して決算書の見栄えを良くすれば格付けが上がる」という誤解です。しかし、これは全くの間違いです。

銀行は、単純な数字の操作を見抜く能力を持っています。むしろ、そのような行為は信頼関係を損なう可能性があります。

格付けを活用した企業改善

自社の財務健康診断

格付けは、自社の財務状況を客観的に把握するための優れたツールです。例えば、

  • 流動比率が低い → 血圧が高い状態
  • 自己資本比率が低い → 体脂肪率が高い状態

このように、財務指標を身体の健康状態に例えて考えると、改善すべき点が明確になります。

改善のための指標

特に注目すべき指標として、以下の2つがあります。

  1. 売上高営業利益率
  2. 売上高経常利益率

これらの指標が低い場合、利益率の改善が必要です。つまり、売上を上げるだけでなく、コスト削減や業務効率化にも取り組む必要があります。

銀行との関係構築

透明性の重要性

銀行との良好な関係を築くためには、定期的な財務情報の提供が欠かせません。これは、年に1回の健康診断を受けるのと同じです。

情報を隠したり、粉飾したりするのではなく、現状をありのままに伝え、改善への取り組みを示すことが重要です。

長期的視点

一時的な数字の操作よりも、継続的な改善努力を示すことが、銀行との信頼関係構築には不可欠です。短期的な融資獲得だけを目的とするのではなく、長期的な企業価値向上を目指すべきです。

まとめ

格付けの本質

銀行格付けは、単なる融資獲得の手段ではありません。それは、自社の強みと弱みを知り、企業価値を高めるための貴重なツールなのです。

格付けを正しく理解し活用することで、以下のような効果が期待できます。

  1. 客観的な財務状況の把握
  2. 改善すべき点の明確化
  3. 銀行との信頼関係構築
  4. 長期的な企業価値の向上

最後に、格付けは恐れるものではなく、むしろ積極的に活用すべきものだということを強調したいと思います。自社の現状を正確に把握し、継続的な改善に取り組むことで、必ず道は開けます。

私たち信用金庫は、地域の中小企業の皆様の成長と発展を全力でサポートいたします。格付けについてご不明な点があれば、いつでもご相談ください。共に、より良い企業づくりを目指しましょう。

参考文献

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