中小企業経営者必見!メインバンクの選び方と銀行取引の戦略

皆様、こんにちは。現役の信用金庫職員として、日々中小企業の皆様と接する中で感じたことをお伝えしたいと思います。今回は、中小企業経営者の皆様にとって非常に重要なテーマである「メインバンクの選び方と銀行取引の戦略」についてお話しします。

目次

1. メインバンクの重要性と選択の必要性

中小企業にとって、メインバンクの存在は非常に重要です。しかし、従来の「メインバンク」という概念には問題があります。多くの経営者は、一度決めたメインバンクを変更することに抵抗を感じがちですが、これは必ずしも正しい考え方ではありません。

企業の成長に伴い、必要な融資額や金融サービスも変化します。そのため、企業規模に応じた銀行選びが重要になってきます。メインバンクを固定的に考えるのではなく、自社の成長段階に合わせて最適な金融機関を選択する柔軟性が求められます。

2. 銀行の種類と特徴

メガバンク、地方銀行、信用金庫の比較

金融機関には大きく分けて、メガバンク、地方銀行、信用金庫があります。それぞれの特徴を理解することが、適切なメインバンク選択の第一歩となります。

  1. メガバンク
    • 大規模な融資に対応可能
    • 国際的なネットワークを持つ
    • 審査スピードが比較的速い
  2. 地方銀行
    • 地域に密着したサービス
    • 中規模の融資に強い
    • 地元企業との関係性が深い
  3. 信用金庫
    • 小規模事業者向けのきめ細かいサービス
    • 地域経済への貢献度が高い
    • 融資審査に時間がかかる場合がある

各銀行の融資審査の特徴と所要時間

融資審査のスピードは金融機関によって大きく異なります。一般的に、メガバンクが最も速く(約2週間)、地方銀行がそれに続き(3週間程度)、信用金庫は1ヶ月以上かかることもあります。

この違いは、各金融機関の規模や審査体制、そして職員の能力差にも起因します。例えば、メガバンクの職員は国家公務員一種レベルの学歴を持つ人が多く、地方銀行は県庁上級職レベル、信用金庫は市町村職員レベルの学歴の人が多いという傾向があります。

3. 企業成長に合わせた銀行戦略

売上規模と必要融資額の関係

企業の成長に伴い、必要な融資額も増加していきます。例えば、月商3,000万円(年商3億6,000万円)の企業と、月商7,000万円(年商8億4,000万円)の企業では、必要な運転資金や設備投資の規模が大きく異なります。

これは人間の成長に例えると分かりやすいでしょう。身長が伸びれば体重も増えるように、企業の売上が伸びれば、それに伴って必要な資金も増えていくのです。

成長段階に応じたメインバンクのシフトチェンジ

企業の成長に合わせて、メインバンクも変更していく必要があります。例えば、創業期は地元の信用金庫がメインバンクとして適していても、事業が軌道に乗り始めたら地方銀行へ、さらに大きく成長したらメガバンクへとシフトしていくことが望ましいケースもあります。

これは、各金融機関の得意分野や融資限度額が異なるためです。成長に伴い大型の融資が必要になった時、小規模金融機関では対応できない場合があります。そのため、経営者は常に自社の成長段階を見極め、最適な金融機関を選択する必要があります。

4. 銀行員の実態と対応策

銀行員の能力と限界

銀行員にも得意不得意があります。例えば、財務や総務の経験がある若手行員は、試算表の作成や会計業務に長けている場合があります。一方で、支店長経験者であっても、必ずしも中小企業の経営に詳しいとは限りません。

多くの銀行員は、お金の流れを把握することに長けていますが、実際の経営や業務の細部までは理解していないことが多いのです。

中小企業向け融資戦略の課題

銀行の中小企業向け融資戦略には課題があります。多くの銀行は、企業の実績のうち良い部分だけを見てメインバンクになろうとします。また、不良債権になる可能性の高い企業にはメインバンクになることを避ける傾向があります。

これは銀行側のリスク管理の観点からは理解できますが、中小企業の成長を支援するという観点からは問題があります。特に、再生や改善が必要な企業に対しては、より踏み込んだサポートが求められます。

5. 経営者が取るべきアクション

自社の財務状況の把握

経営者は自社の財務状況を常に把握しておく必要があります。これは、銀行との交渉において非常に重要です。自社の強みや弱み、成長の可能性を数字で示せることが、有利な条件での融資獲得につながります。具体的には、以下の点を押さえておきましょう。

  1. 月次の売上と利益の推移
  2. キャッシュフローの状況
  3. 借入金の返済計画
  4. 将来の事業計画と必要資金

セカンドオピニオン、サードオピニオンの重要性

医療と同じように、金融取引においてもセカンドオピニオン、サードオピニオンを得ることが重要です。一つの銀行の意見だけでなく、複数の金融機関から意見を聞くことで、より良い選択ができます。

例えば、ある銀行から融資を断られたとしても、別の銀行では融資が可能かもしれません。また、融資条件や金利についても、複数の選択肢を比較検討することで、より有利な条件を引き出せる可能性があります。

戦略的な銀行取引の実践

戦略的な銀行取引を行うためには、以下の点に注意しましょう。

  1. 定期的な情報開示:銀行に対して、定期的に自社の業績や今後の計画を開示します。これにより、銀行との信頼関係を構築し、緊急時の融資にも対応してもらいやすくなります。
  2. 複数行取引:メインバンクに加えて、サブバンクも持つことで、リスク分散と交渉力の向上を図ります。
  3. 成長に合わせた銀行選択:自社の成長段階に合わせて、適切な規模と特性を持つ銀行を選択します。
  4. 銀行の特性理解:各銀行の得意分野や審査基準を理解し、それに合わせた融資申請を行います。
  5. 経営計画の提示:単なる資金需要だけでなく、具体的な経営計画を提示することで、銀行の理解と支援を得やすくなります。

6. まとめ:賢明な銀行選択の重要性

企業の成長と銀行取引は密接に関連しています。適切なメインバンクの選択は、企業の成長を加速させる重要な要素となります。一方で、不適切な選択は成長の足かせになる可能性もあります。

経営者の皆様には、自社の状況を客観的に分析し、主体的に銀行を選択する姿勢が求められます。銀行は単なる資金提供者ではなく、ビジネスパートナーとして捉え、互いに成長していける関係を構築することが理想的です。

最後に、銀行選択は一度決めたら終わりではありません。定期的に自社の状況と銀行との関係を見直し、必要に応じて新たな関係構築を検討することが、長期的な企業の成功につながります。中小企業経営者の皆様、自社の成長のために、戦略的な銀行取引を実践してみてはいかがでしょうか。

参考文献

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