はじめに
こんにちは。現役の信用金庫職員のしんちゃんです。今回は、銀行融資における重要なポイントである「返済財源」について詳しく解説します。中小企業の経営者の方々や、金融機関で働き始めた若手の皆さんにとって、この知識は非常に重要です。
返済財源の基本概念
返済財源とは何か
返済財源とは、借入金を返済するための原資となるお金のことです。銀行は融資を行う際、この返済財源を非常に重視します。なぜなら、銀行の融資回収率は約95%と高く、これは返済財源の適切な評価によるものだからです
銀行のリスク管理
一般的に、銀行はリスクを取らない業務だと言われることがありますが、実際はそうではありません。大企業向けの融資では、無担保で数十億円、時には数百億円の融資を行うこともあります。一方、中小企業向けの融資では、約95%のケースで担保を取っています。
企業規模による融資の違い
大企業向け融資
大手企業向けの融資では、以下のような特徴があります。
- 無担保融資が多い
- 融資額が大きい(数十億円から数百億円)
- メガバンクが主な融資先
中小企業向け融資
中小企業向けの融資では、以下のような特徴があります。
- 担保を取るケースが多い(約95%)
- 主な担保の種類
- 不動産担保
- 信用保証協会の保証
- 連帯保証
- 定期預金等の金融資産
返済財源の種類と考え方
返済財源は、融資の種類や期間によって異なります。主に以下の2つに分類されます。
短期融資の返済財源
- 借入期間:1年以内
- 返済財源:売上高
長期融資の返済財源
- 借入期間:1年超
- 返済財源:フリーキャッシュフロー
フリーキャッシュフローの計算方法
フリーキャッシュフローは、以下の式で計算します。
フリーキャッシュフロー = 経常利益 + 減価償却費 - 法人税
この計算式は、税引後に自由に使えるキャッシュを示しています。
銀行の融資審査の視点
銀行は融資審査において、3つの時間軸で企業を評価します。
- 過去
- 現在
- 将来
月次決算の重要性
現在の状況を把握するために、銀行は月次決算(試算表)を重視します。理想的には、毎月5日から10日までに前月の月次決算を作成できることが望ましいです。これにより、銀行は企業の現状と将来の見通しを適切に評価できます。
融資の種類と返済財源の関係
運転資金の返済財源
運転資金は、本来短期で借り入れるべきものです。返済期間が1年以内の場合、返済財源は売上高となります。したがって、月別の売上計画を明確に示すことが重要です。
設備資金の返済財源
設備資金の場合、購入する物件の減価償却期間が借入期間の上限となります。例えば
- 鉄筋コンクリート建物:最長30年程度
- 軽量鉄骨・重量鉄骨建物:最長25年程度
返済財源は、5年から10年程度のキャッシュフロー予測に基づいて評価されます。
効果的な融資申請のポイント
1. 売上計画の提示
運転資金の融資を申請する際は、具体的な月別売上計画を提示することが重要です。これにより、銀行は返済財源の確実性を評価できます。
2. 設備投資効果の説明
設備資金の融資を申請する際は、新規設備投資による効果を明確に説明することが重要です。単に過去のキャッシュフローを示すだけでなく、新しい設備がもたらす利益増加や効率化について具体的に説明しましょう。
融資以外の資金調達方法
銀行融資だけでなく、他の資金調達方法も検討することが賢明です。
リースの活用
設備投資の一部をリースで調達することで、銀行融資の負担を軽減できる場合があります。ただし、物件によってはリースが適さないケースもあるので、専門家に相談することをお勧めします。
複合的な資金調達戦略
銀行融資、リース、自己資金など、複数の調達方法を組み合わせることで、より柔軟で効果的な資金調達が可能になります。
よくある質問と回答
- 返済財源の最低限の基準はありますか?
-
返済財源の基準は融資の種類や期間によって異なります。1年以内の短期融資の場合は売上高、1年を超える長期融資の場合はフリーキャッシュフローが主な返済財源となります。具体的な基準は個々の案件や金融機関によって異なるため、一概に最低限の基準を定めることは難しいです。
- 銀行は企業のどの時点の財務状況を見ているのですか?
-
銀行は主に3つの時間軸で企業を評価します。過去、現在、将来です。特に現在の状況を把握するために、月次決算(試算表)を重視します。理想的には、毎月5日から10日までに前月の月次決算を作成できることが望ましいです。
- 設備投資の効果はどのように説明すればよいですか?
-
設備投資の効果を説明する際は、新規設備導入による具体的な利益増加や効率化について詳細に説明することが重要です。例えば、生産性向上による売上増加の予測、コスト削減効果、新規顧客獲得の見込みなどを、数値を用いて具体的に示すことが効果的です。
- 運転資金と設備資金の返済財源の違いは何ですか?
-
運転資金の場合、特に1年以内の短期融資では売上高が主な返済財源となります。一方、設備資金の場合は、購入する物件の減価償却期間が借入期間の上限となり、5年から10年程度のキャッシュフロー予測に基づいて返済財源が評価されます。
まとめ
返済財源の理解は、融資を受ける側も、融資を行う側も非常に重要です。以下のポイントを押さえておきましょう。
- 短期融資(1年以内)の返済財源は売上高
- 長期融資(1年超)の返済財源はフリーキャッシュフロー
- 月次決算の迅速な作成が重要
- 設備投資の効果を具体的に説明する。
- 必要に応じて、融資以外の資金調達方法も検討する。
これらの知識を活用することで、より効果的な資金調達や融資審査が可能になります。中小企業の経営者の方々は、この情報を基に自社の財務状況を見直し、より強固な経営基盤を築いていただければと思います。また、若手の金融マンの皆さんは、これらの知識を実務に活かし、顧客企業により良いアドバイスができるよう努めてください。融資に関するご質問やご相談がありましたら、お気軽にお問い合わせください。皆様の事業の成功を心よりお祈りしております。